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脱・助成金依存


 NPO向けの助成金申請セミナーは数多くあるけれど(私もつい先日講師で喋ってきたけれど)、震災から4年目を迎える被災地のNPOにとっては、脱・助成金依存セミナーの方が必要なのではないかと思いました。

 とにかくこの3年間は、震災後、急激に増えた社会的課題に立ち向かわなくてはならず、特に地元の団体は助成金・補助金を主な資金源にするしかなかったと思います。だからこそ、地星社でも助成金の情報を提供し続けてきました。

 しかし、助成金・補助金はいつまでも続くものではありません。特に収入のほとんどが助成金である場合、脱・助成金依存を図らないと、持続可能な事業とはならないでしょう。

・その問題に取り組む別の担い手を育てる(当事者に近いところで)。
・その問題を緩和させる別の取り組みをする。
・問題が悪化しないよう予防的な事業をする。
・何らかの手段で対価が得られるようにする。
・継続的に寄付を得られるようにする。
・行政の仕事にする(委託事業になるようにする)。
・それでも足りない分を助成金で得る。

 脱・助成金依存に特効薬があるわけではなく、上に挙げたようなことをそれぞれ時間をかけて取り組むしかないと思います。時間をかけないとできないことだから、早めに取り組み始める必要があります。

 というようなことを、どこかで議論できるといいんだけど。

生活保護—知られざる恐怖の現場(今野晴貴)


 NPO法人POSSE仙台支部の渡辺さんにインタビューに行ったときに、生活保護やブラック企業の話も出てきて、POSSE代表の今野さんが書いた『生活保護』(ちくま新書)と『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』(文春新書)をその場で購入させていただきました。2冊とも読み終えたので、まずは『生活保護』についての感想など。

 NPO法人POSSEは、若者の労働相談や生活相談を行っている団体。本書では、1500件を超える相談対応の経験をもとに、生活保護における違法行政の実態が紹介され、こうした問題が起きる構造についての分析がなされています。

 この本を読んでわかったこと、感じたことなどいろいろありますが、何がすごいかって、生活保護の申請拒否の実態があまりにもひどいこと。最初に取り上げられているのは、京都府舞鶴市に住むシングルマザーBさん(30代)の事例。Bさんは所持金が600円しかなく、生活保護を申請しようと市の窓口に行ったところ、申請書を渡してもらえないため、2012年6月、POSSE京都支部に相談しました。

 そもそも申請書がもらえないという時点でかなり驚きなのですが、書いて持っていっても受け取らないというひどさ。POSSEのスタッフが申請に同行して、そのときの役所とのやり取りが生々しく描かれています。やや長くなりますが、引用します。

 同日午後、今度はBさんの申請に京都POSSEスタッフ3人が同行した。しかし、やはり申請書をもらうことができず、職員に理由を聞いても「もう午前中に話した」としか答えない。
(中略)
 フロアにはC氏と同じ保健福祉係の職員も何名かいたが、「担当じゃないのでわからない」「(C氏を)呼びに行っている」と言うばかりでとりつくしまがない。1時間近く待ってもC氏が姿を現さないため、私たちが自前で用意した申請書を提出しようとしても、職員は「わからない」「受け取る担当ではないので」などとしか答えない。
(中略)
 申請書を受け取ってもらうため、私たちが閉館時間を過ぎても職員と押し問答をしていると、C氏が戻ってきて「もう時間です。業務は終わりました」「もう帰ってください!」と強い口調で怒鳴りだした。しまいにはC氏の「みんな業務の邪魔になるよな!」という声に呼応して、数名の職員が立ち上がって「はい、そうです」「帰ってください」と口々に言いだす、という異常な状況。
 Bさんは申請書をカウンターに置き、「申請します」とはっきり伝え、私たちはその場を後にした。私たちが帰る後ろから、「それは受け取れませんよ。持って帰ってくださいよ!」「Bさん!Bさん!忘れ物ですよ!」と申請書を突き返そうとする職員の声が何度も聞こえてきた。

 当たり前ですが、舞鶴市役所のこうした対応は違法です。このやり取りをしている間にも、POSSEのスタッフは厚労省や京都府の担当者に電話をかけ、舞鶴市役所に指導してもらうのですが、それでも現場の対応が変わらないというのだからある意味筋金入り。

 本書では、こうした「水際作戦」の事例が次々と紹介されていきます。紹介されているのは、どれもここ数年の事例です。また、生活保護受給者に対しても、さまざまなハラスメントなどにより、無理矢理「自立」させて、生活保護から追い出す事例も少なくないようです。

 なぜこうした違法行為がまかり通るのか。行政の財政難から、保護費を削減/抑制したいという予算削減圧力が働くこと、生活保護の決定を担うケースワーカーの人手不足・専門性不足などが挙げられています。

 生保受給者に対するバッシングや世論が、行政の違法行為を支えている側面もあるでしょう。だからこそわれわれは生活保護の実態をもっとよく知る必要があると思います。

 困っている人を見たら助ける、社会的に弱い立場にある人に親切にするというのは、人間の道徳の基本だと思いますが、「道徳教育の強化」を掲げている国が、困っている人を助けず、社会的に弱い立場にある人に厳しいというのはなんとも解せないことです。

バレンタインにまつわる寄付の話題


 気づいたらいつの間にか今年のバレンタインデーも終わっていましたが、バレンタインにまつわる寄付のニュースを見つけたのでご紹介します。

 まずは、義理チョコをやめてその分を寄付にという取り組みを2件。

”義理チョコ代でチャリティ募金”のすすめ(Excite Bit コネタ) – エキサイトニュース(1/2)

 共栄火災海上保険では、「“義理チョコ、あげたつもり・もらったつもり”バレンタイン・チャリティ募金」として、義理チョコの配布やホワイトデーのお返しの代わりに、一口500円を募金で集め、NGO「マザーランド・アカデミー・インターナショナル」を通して、西アフリカ・マリ共和国の難民キャンプへの支援活動資金として寄付しているとのこと。1993年から続けていて、今年で22年目。これまで21年のの募金の総額は2981万円というからなかなかすごいですね。

義理チョコやめ寄付 住友別子病院、新居浜市に : 愛媛 : 地域 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 こちらは愛媛県新居浜市の住友別子病院での取り組み。こちらも同様に義理チョコやホワイトデーのお返しをやめて、寄付することにしたとのこと。一口500円で募金額を申請すると給与から天引きされる。今年は約150人が参加して、寄付額が15万円だから、平均二口寄付しているということですね。寄付先は新居浜市。

 次は寄付つきチョコの話題。

チョコを1つ購入すると、アフリカの子どもに学校給食1食分をプレゼント OisixでTABLE FOR TWOチョコを期間限定発売:産経関西(産経新聞大阪本社情報サイト)

 OisixとTABLE FOR TWOのコラボ商品。個数限定で販売していて、完売次第終了とのこと。チョコレート1個につき20円が寄付金となり、TFTを通じて飢餓に苦しむ途上国の子どもたちの食料支援に使われるそうです。チョコレートは税込525円。

 こういう年中行事に合わせて寄付を集めるのも一つの方法ですね。

被災三県における自殺者数の推移について(2013年9月までのデータ)


追記(2013年11月11日):
 グラフの元となるデータを地星社のサイトからダウンロードできるようにしました。被災三県の全市町村のデータをエクセルファイルにまとめていますので、ぜひそちらも参照してください。

被災三県での自殺者数の推移について(2013年9月まで) | 活動報告 | 地星社

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 被災地において自殺は増えているのか?

 内閣府の自殺対策のサイトで統計情報(自殺の統計 – 内閣府)が公開されており、月別のデータも入手できます。2013年の状況はどうなっているのか、調べてみました。

 13年については9月までのデータが出ているので、9月までの累計を9で除し、それを12倍して年換算値を出しています。被災三県の全市町村についてデータを調べましたが、以下のグラフで取り上げた市町はフダの主観で選んでいます。特に基準はありませんので、その点はご留意ください。また、男女合わせたデータを使用しましたが、男女別で調べるとまた違った傾向を見つけることができるかもしれません。

 結論についてすごくざっくり言うと、全般的には11年、12年は減って、13年でまた増えているという傾向があるようです。他の災害においても、災害の後しばらくは自殺が減り、その後増えていったという傾向があったようなので(話に聞いているだけで自分ではまだ詳しく調べてませんが)、今後、地域の実態に合わせたよりいっそうの自殺対策が必要になると思います。あと、ここでは取り上げませんでしたが、沿岸被災地以外で、自殺の多い地域があることに気づきました。被災地に目が向きがちですが、それ以外の地域にも多くの地域課題があることには留意しなければいけません。

岩手県

 あまり明確な傾向はありませんが、自殺は減ってきているように見えます。今後増加に転じないか注意深く見ていく必要があります。宮古市は11年、12年と減りましたが、13年になってまた増加に転じています。

岩手県主要被災地自殺者数
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宮城県

 11年、12年と減少していたのが、13年になって増加に転じています。非常時から平時となり、震災前の水準に戻ったとだけなのか、それとも今後も増加していくのか、注意してみていく必要があります。気仙沼市については、震災前よりも明らかに増加しており、いっそうの対策が求められます。仙台市若林区は、12年から13年の自殺者数が、今回取り上げた8地域の中では唯一減少しています。

宮城県主要被災地自殺者数
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福島県

 原発事故の影響もあり、福島県ではどこが被災地でどこが被災地でないかとも言い難いので、いくつかの市を選んでグラフにしました。減少もしくは横ばいといった感じでしょうか。

福島県主要都市自殺者数
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 福島、郡山、いわきという三大都市が入っていると小さい都市の自殺者数の推移がわかりにくくなるので、三大都市を除いたグラフもつくってみました。そうすると、沿岸部の相馬市では、12年にやや減少して13年に増加しており、宮城県沿岸部の被災自治体と同じ傾向があることがわかります。同じく沿岸部の南相馬市については横ばいのようです。

福島県内4都市自殺者数
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 原発事故のあった双葉郡での自殺者数について、積み上げ棒グラフにしました。震災後の自殺者数は減っていますが、居住地ベースのデータなので、住んでいる人が避難して大幅に減ったから統計上の自殺者数も減っているのではないかと思います。各地に避難している人はどうなっているかというのは別に調べる必要があるようです。ちなみに内閣府の自殺統計では、東日本大震災に関連した自殺者数のデータも公開しています(自殺の統計 – 内閣府の「最新の震災関連自殺者数」を参照のこと)。

福島県双葉郡自殺者数
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 被災三県全市町村のデータについては、地星社のサイトかどこかからのちほどダウンロードできるようにしたいと思います。