“イノベーション”と呼ばれた青年


とある沿岸被災地にて、地域に密着した活動をしている某団体の方から聞いた話。

震災後、その地域に来た某有名大学の学生さんは、やたらと「イノベーション、イノベーション」というものだから、あだ名が「イノベーション」になったそうな。その地域の人たちは、若い人も含めてみんな「イノベーション」なんて言葉を聞いたこともないし、もちろん意味もわからないから、かえって滑稽に映ったらしい。

その学生さんに限らず、震災後にいろんな人がその地域にやってきて、復興のためにという名のもと、ビジネスのアイデアやら何やら持ってきたらしいけれども、それらは結局どれもうまくはいかなかったとのこと。

ビジネスモデルありき、イノベーションありきじゃないよなと思うのです。

イノベーション自体は必要だけど、新しいアイデアを生み出すことよりもむしろ、それが受容されていくことの方が、特に都市部から離れた地域においては大事なんじゃないか。そうすると、「イノベーション」という言葉も、「地域を元気にする新しいしくみ」とか「地域課題を解決する新しいしくみ」のような、ケースに応じた言い換えが必要だし、いわゆる「よそ者」が地域に入って何かをしようとするのであれば、もっと地域や地域の人々と向き合い、関係をつくっていくことが先ではないのか。

地域の人と一緒に課題解決に取り組んで、その結果、事後的に評論家や研究者みたいな人から「あれはイノベーションだ」と言われるくらいでいいと思う。

誰のためにもならない社会起業家とかNPOが増えても、それって喜劇のような悲劇でしかない。

正統性について


正統性(legitimacy)って、NPOとかの活動においても大事だよなーと、今日の帰りの車の中でつらつら考えてた。
正統性と言ったらふつう、権力による支配を受け入れるかどうかって話で、伝統的支配とかカリスマ的支配とか合法的支配とかマックス先生が三類型を示してくださっているけど、そういう考えが市民活動にもいくらか援用できるのではないかと。

NPOには権力なんてないので、支配ってことじゃなく、活動/事業に対する理解とか賛同とか納得を得るための正統性。
まったく同じ活動でも、誰(どういう属性を持つ人)がやるかで、まわりの人の反応が違うってことは経験的にみんな知ってると思う。特にそれが社会的な意味を持つ活動であれば。

正統性を持つと見なされないと、周囲から協力は得られないんだよな。
逆に、正統性を持つと見做されているのに、それに見合った活動をしないと信頼性が落ちるということもある。

サポーターか、プレーヤーか


先週に引き続き、復興支援活動をしているNPOを訪ねてお話を伺ってきました。先週は社会的弱者の支援をしている団体をまわってきたのですが、今日行ったのは地域コミュニティづくりや産業再生の分野で活動している団体です。

帰ってきてからつらつらと考えたのですが、地域コミュニティづくりや産業再生の分野の団体だと、サポーターの立場とプレーヤーの立場とがあるんだなあと。

社会的弱者の支援や、地星社のような中間支援の団体だと、自分たちがプレーヤーということはあまりないと思うので、そのへんが大きな違いです。

サポーターなのか、プレーヤーなのか。やる事業によって、同じ団体の中でも立場が入れ替わることもあるかもしれないですけれど、今自分はどちらの立場なのかという自覚は必要ですね。そういう立場をしっかり認識して、社会から何を求められているかわかっている団体が成果をあげていると思います。

調べるということ


 NPOが活動するにおいて、「調べる」ということはかなり重要なスキルであり、テーマだと思うのですが、そういうことを教えてくれるような講座や本は他のテーマに比べると絶対的に少ないです。

 せんだい・みやぎNPOセンターで、かつて「NPOが社会を変えられない5つの理由」という連続講座を行いました。その中の一コマで「調べられない」というのがあり、北大の宮内泰介先生に講師をしていただいたことがありました。それから、同センターで、NPOが行う調査活動に対する助成というテーマで助成プログラムを実施したことがありましたが、そのプログラムの説明会では東北大の西出先生に社会調査についてのミニレクチャーをしていただきました。

 自分の記憶にある中で、NPO向けに調査あるいは調べるをテーマにして講座をやったのはこれだけですね。1回の講座だけで考え方やスキルが身に付くものではないということも、このテーマを選びにくくしている要因かも知れません。

 調査というと、まず思い浮かべるのはアンケート調査のようなものでしょうか。しかし、NPOの活動の現場でまず必要なのは、公開されている各種統計やデータから必要な情報を集めたり、分析したりすることではないかと思います。

 活動する地域の人口はどれくらいで、年齢別の人口分布はどうなっているか、さらにその人口はどのように推移していくか。また、人を対象とする活動であれば、それらの人たちは地域にどのくらいいるのか。そういう基本的な数字からまずは明らかにしていき、わかりやすく見せる(グラフ化するなど)必要があるでしょう。

 このブログにおいても、NPOにとって必要となる調査の技法や考え方などについて、ときどき書いていきたいと思います。