溜まり続けるプルトニウム
その処理方法の話は若干後回しにするとして、問題はこの夢の核燃料サイクル。プルトニウムを取り出すところまでは何とか来たけれども、プルトニウムを燃やす高速増殖炉がなかなかできません。
ここで、普通の政府ならどうするかといえば、高速増殖炉ができるのを一生懸命応援をして、早く技術を確立しようということになると思うんですね。高速増殖炉がなければプルトニウムを燃せないわけですから、プルトニウムを作ってみても始まらない。使用済み核燃料を再処理したって、再処理してできたプルトニウムをどうするか。どうしようもないわけです。
普通、常識的なら使用済み核燃料を50年間とりあえず中間貯蔵しておくでしょう。計画によれば50年経ったら高速増殖炉ができるわけだから、そうなったら再処理を始めてプルトニウムを取り出して、プルトニウムを高速増殖炉で燃やそうじゃないか。そうすれば日本は中近東にエネルギーを頼らなくてすむと、まあ、そういう決断に本来ならなるのではないかと思ったのですが、なかなかそうならないのがこの国の不思議なところでありまして、高速増殖炉が50年経たないとできないのだけれども、再処理だけはどんどんやろうと言って、六ヶ所村に再処理工場を造った。
お隣りの北朝鮮で、プルトニウムっていうのが今50キロ、まあ、人によっていろいろな説がありますが、どうも50キロくらいプルトニウムがあると言われていますが、北朝鮮が50キロのプルトニウムを入手したらどうなったかというと、六カ国協議です。六カ国協議でアメリカもロシアも中国も韓国も日本も参加して、大騒ぎをやっているわけであります。
今日本が保有しているプルトニウムがどれくらいあるかというと、約40トンが海外にあります。イギリス、フランスに使用済み核燃料の再処理を頼んで、とにかくプルトニウムを取り出して高速増殖炉をやるんだといって、お願いをしていたんだけれども、高速増殖炉はできないで、プルトニウムだけできちゃいました。こういう状況で、このプルトニウムはいったい全体どうすんねんと。この他に日本国内に数トン。キロじゃないですよ、トンですからね。50キロで六カ国協議だと、4万キロあったら、何千カ国協議くらいのことをやらないと(笑)。国連がいくつあっても足らないよっていう感じで。
まあ、40数トンといっても、国内には数トンですが、返してくれと言ったら40トン返ってきますし、いや言わなくてもいずれ返ってくるでしょうし、北朝鮮とは少なくとも桁が違う。桁が違うというか、単位が違うぐらいのプルトニウムを、日本は今、国内外に保有しているわけであります。
できちゃったプルトニウムが40数トンありますということで、普通に考えるならば、この40数トンどうしましょうっていう話になるわけであります。ところがその六ヶ所村の再処理工場でどれくらいのプルトニウムができるかというと、1年間に8トンできると言われていますから、本格稼動すると、今持っている40数トンにプラスして、年に8トンずつプルトニウムが増えていっちゃう。
今40数トンあるのが、来年50トン超え、再来年60トン、その次は70トン近くなる。そういうことになってしまう。これ、何の意味があるのでしょうか。実はウランよりもプルトニウムのほうが、テロリストフレンドリーなんですね。私もあまり詳しくはないのですが、プルトニウムというのは、例えば、吸い込んで肺にプルトニウムが入ると致命的なんだそうです。ところが、そうでもしない限りプルトニウムは持ち運びに便利な核物質なんだそうです。ウランを持ち運ぶよりはプルトニウムを持ち運んだ方が、よっぽど安全だと。
そうすると、そんなテロリストフレンドリーなものを日本に何十トンも保管しておいて、しかも日本はどういう保管形態か、これはどういう保管形態というのは機密になっているからあまり言わないことになっていますが、おそらく、テロリストからしてみると非常に好都合に丸腰の警備員が守っているような警備形態になってるだろうと。
実はこのプルトニウムというのはロシアもその核兵器を解体して、プルトニウムを取り出して、そのプルトニウムを持っているという状況になっているのですが、アメリカ政府はロシアに対して、取り出したプルトニウムは必ずスパイクしろと言っている。
スパイクしろっていうのはどういうことかというと、純粋なプルトニウムだとテロリストフテロリストフレンドリーで持ち運びしやすいから、このプルトニウムを、もっと汚い核物質で汚せと。つまり、放射能レベルを高くするわけです。そうすると汚されたプルトニウムはなかなかテロリストも運びにくいから、プルトニウムをきれいなままで保管をするなと。このプルトニウムを必ず汚せという申し入れを、アメリカはロシアにかなり強硬にしています。
日本もこのプルトニウムを、いや、ウランと混ぜていますと言うんですが、専門家は日本のやり方はだめだと。日本のやり方だと化学処理したら全部プルトニウムが分離できちゃうような混合形態になっているんで、それはとてもスパイクしているとは言えない状況にあるのだそうです。
これは国際的に見てもさすがに許されない状況です。テロリストのターゲットになる、核兵器の材料になるような物質を日本だけが野放図に、使用目的もないのにどんどん溜め込みますなんていうのはですね…、北朝鮮はミサイルを上げたときに人工衛星と言っていたわけですが、日本だって人工衛星を上げているわけで、人工衛星上げている国がプルトニウムをこれだけ持っていりゃ、そりゃ六カ国協議やりたくもなりますわね。