使用済み核燃料が溢れる貯蔵プール
ところが今そうなってない。それはどうしてそうならないのかというのが、非常にややこしいところで。もちろん高速増殖炉ができたから、じゃあすぐ核燃料サイクルが始められるかというとですね、例えば高レベル放射性廃棄物の処理をどうするのかそういうことも決まらない段階で簡単にはやれないと思いますが、少なくとも高速増殖炉ができなければそんな議論もやる必要はないわけであります。
なぜ今、政府、電力会社、与野党の議員…、この間民主党もやるんだと決定をしそうになって、民主党よお前もかと(笑)、その前に自民党をなんとかしろと言われちゃいますけど(笑)。なんでこういうことをやろうとしているかというとですね、今の原子力発電所、ウラン燃料を投入すると、使用済み核燃料が出ます。この使用済み核燃料をプールにためてるんですね。貯蔵プールと呼ばれるものの中に。この貯蔵プールというのは原子力発電所のそばにあるわけですが、この原子力発電所のそばにある貯蔵プールの中に使用済み核燃料をためております。
ところが、問題はこれがどんどんたまっていっちゃうわけです。福島あたりの原発はもうそろそろ限界に来ている。貯蔵プールが一杯になると、燃えかすを出せなくなっちゃいますから。燃えかすを出せなくなるということはどういうことかというと、燃やすなということですよね。使用済み核燃料で貯蔵プールが一杯になっちゃうと、その原子力発電所は止めないといけなくなる。止めると電力会社は一日あたり1億円って言ったかな、その程度の損失になるそうです。で、電力会社は焦っているわけです。
このままいくとこれは止まってしまう。何とかせねばいかん。で、どうするかというと、ここに天の助けがあるわけですね。なんと六ヶ所村の再処理工場には貯蔵プールがあります。それはそうですよね。使用済み核燃料を再処理するわけですから。どんな工場だって原材料を置かなければならないわけだから。
電力会社が考えたのは、あるいは経済産業省が考えたのは、原子力発電所のそばにある使用済み核燃料の貯蔵プールに入っているものを、六ヶ所村の再処理工場の貯蔵プールに移しましょう。そうすれば、原子力発電所のそばの貯蔵プールは空くわけですから。そうすると原子力発電所を止めずに操業することができる。これはいい考えだからせっせと移そうと思ったら、実は世の中そうはうまくいかなかった。これで出てきたのが青森県。
青森県いわく、ちょっと待ってくださいよと。うちはごみ捨て場じゃありませんから。貯蔵プールに使用済み核燃料を持ってくるんだったら、これは必ずこの再処理工場で再処理されて、製品になるんでしょうねと。再処理工場が動かないのに、貯蔵プールだけ使ってそこへ全国各地の原発で出た燃えかすを持ってきて、青森県にボンと置いて、ああよかったと、うちのプールがきれいになったということでは困りますよと。
だから青森県は使用済み核燃料を六ヶ所村の再処理工場の貯蔵プールに持ってくる以上再処理工場を稼動してくださいという条件を付けました。ここに入ったものが単なるごみではなくて、工場の材料なのだということを明確にしてください。そうでない限り、ものを持ってくるのは困りますというのが、青森県と電力会社、あるいはそこに経産省も絡んで、そういう約束になっている。だから使用済み核燃料を貯蔵プールから六ヶ所村へ持って行くためには、再処理工場を動かさないといけない。
持っていけないと原子力発電所が止まって、原子力発電所が止まると、電力会社は損失が出ますから、結論から言うと、じゃあ再処理工場を動かすしかないじゃないかと言うんで、プルトニウムが40数トンプラス毎年8トンという現状になってしまったわけです。
実はこの貯蔵プールを使わない保管のやり方があって、貯蔵プールを使うのは湿式。もう一つは乾式。要するに地上で、使用済み核燃料を保管させてください、そういう技術が実は確立されている。貯蔵プールの代わりに地上でやらしてくださいと言えば、まだ余裕はあるわけです。
あるいは全国の貯蔵プールには一杯のところと空いているところといろいろあって、上手く使えば後二十年は一杯になることはないという研究も発表されました。だからやり方はいろいろあるんです。
だからこの貯蔵プールが一杯になる前に、乾式貯蔵にするなり全国の貯蔵プールを上手く使うなりなんなりして、とにかく使用済み核燃料は今後50年間、中間貯蔵ですと。50年間待ってみて、高速増殖炉をやるかどうかけりつけましょうと。30年待って50年待ってできなかったら、もうあきらめた方がいいでしょうと。
50年後にひょっとすると高速増殖炉ができて、使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出そうということになるかもしれないから、とりあえず50年は使用済み核燃料を中間貯蔵させてくださいと。50年経ったところでそこは判断をしようじゃないですかということに国の政策を変えて、とにかく50年間は使用済み核燃料を中間貯蔵するんですということにすれば、何もこんな再処理工場を稼動させてプルトニウムを取り出す必要はないんですね。