“イノベーション”と呼ばれた青年

とある沿岸被災地にて、地域に密着した活動をしている某団体の方から聞いた話。

震災後、その地域に来た某有名大学の学生さんは、やたらと「イノベーション、イノベーション」というものだから、あだ名が「イノベーション」になったそうな。その地域の人たちは、若い人も含めてみんな「イノベーション」なんて言葉を聞いたこともないし、もちろん意味もわからないから、かえって滑稽に映ったらしい。

その学生さんに限らず、震災後にいろんな人がその地域にやってきて、復興のためにという名のもと、ビジネスのアイデアやら何やら持ってきたらしいけれども、それらは結局どれもうまくはいかなかったとのこと。

ビジネスモデルありき、イノベーションありきじゃないよなと思うのです。

イノベーション自体は必要だけど、新しいアイデアを生み出すことよりもむしろ、それが受容されていくことの方が、特に都市部から離れた地域においては大事なんじゃないか。そうすると、「イノベーション」という言葉も、「地域を元気にする新しいしくみ」とか「地域課題を解決する新しいしくみ」のような、ケースに応じた言い換えが必要だし、いわゆる「よそ者」が地域に入って何かをしようとするのであれば、もっと地域や地域の人々と向き合い、関係をつくっていくことが先ではないのか。

地域の人と一緒に課題解決に取り組んで、その結果、事後的に評論家や研究者みたいな人から「あれはイノベーションだ」と言われるくらいでいいと思う。

誰のためにもならない社会起業家とかNPOが増えても、それって喜劇のような悲劇でしかない。

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