地域に根ざした教育を展開している大学の事例として、松本大学、共愛学園前橋国際大学、南大阪地域大学コンソーシアムの3つが取り上げられている。昨今グローバル教育がもてはやされているが、教育の本質ということからするとむしろこういった取り組みに学ぶところの方が多いのではないか。地域に出かけて、地域の課題に取り組むということを、ぜひ多くの大学に体験してもらいたいと思う。
本書で紹介されていた2つの大学と1つの大学コンソーシアムの事例はどれも興味深いものだったが、ここでは南大阪地域大学コンソーシアムが行った事業をひとつ書いておく。
リンカーンマッチングプロジェクトというもので、「学生の学生による学生のための就職活動」である。活動は二つあって、ひとつは学生が地域の中小企業を取材し、就職情報誌をつくること。もうひとつはこの取材をもとに、学生が企業の紹介をする合同企業説明会「就コレ」を開催すること。
取材の前にはマナー研修やインタビュー研修もあって、社会と接するときの振る舞い方をみっちり教わる。そして、就職情報サイトなどでは出合わないような地域の中小企業の存在を知って、中小企業に対する先入観が変わり、地元の優良企業と認識するようになる。また、就職情報誌をつくる過程や、合同企業説明会でプレゼンをすることで文章力、表現力も鍛えられる。もちろん、これを最後までやり遂げることで得られることも大きいだろう。
このコンソーシアムは特定非営利活動法人の法人格を持って運営されている。地域の大学が会員として参加しているNPOなのだ。複数の大学が組むことでうまく相乗効果を挙げているようだ。全国に大学コンソーシアムは数多くあるようだが、私のような部外者からすると単位互換制度をやっている程度に過ぎないように見える。南大阪地域大学コンソーシアムのようなやり方を見習ってもよいのではないだろうか。